トリルについて(デュオ・バロックのトリルについて)

トリル1 LABO

クロマティック・ハーモニカは実はトリルが得意な楽器です。(音は限定されますが…)
こんなに楽に、速くトリルができる楽器はなかなかありません。

クロマティック・ハーモニカでのトリルは、スライドレバーを使った半音のトリルが大半ですが、それ故にハーモニカの曲の場合、トリルで迷うことがあります。

例えば、「ソ」の音にトリルが書かれていた場合、
トリル1

通常は幹音同士の「ソ⇔ラ」のトリルになりますが、
トリル2

暗黙の了解的にスライドレバーを使って、「ソ⇔ラ♭」の場合があります。
トリル3

下記のようにハ短調だったり、あるいはトリルに♭が書かれていれば迷うことはないのですが…
トリル4
そういった時は、ピアノのパートなどから和声的に見て、どちらの音が正しいのかを判断することになります。
(他楽器の曲で「ソ⇔ラ♭」を使ってしまうと、和声的または音階固有音に無い音になるため、不自然な感じがします。)

 

また時代によってもトリルの演奏方法が異なってきます。
現代のトリルは主要音(ソ)で始まり、主要音(ソ)で終わりますが、バロック等の時代は下記のように主要音(ソ)の上接音(ラ)から始まります。
トリル5

なぜ上接音から始まるのか?というと、現代のトリルは装飾的な意味合いが大きいですが、バロックの時代では和声的な意味合いが大きく、非和声音(倚音)を目立たせることで響きがより豊かになり、緊張度も高まります。
ただ単純に「上接音から始めればOK!」というわけでもなく、上接音の長さはどうするのか?速度はどうするのか?という問題も出てきます。

 

ハーモニカそのものが発明されたと言われているのが1820年代頃で、スライド式のクロマティック・ハーモニカが発明されたのが1920年代頃なので、バロック時代にハーモニカはまだ誕生していないわけですが、ジェームス・ムーディーの作品には、バロック様式で書かれたものや、バッハ、ヴィヴァルディのオマージュ作品があります。

先日アップした音源「デュオ・バロック」にもトリルが数ヶ所出てくるのですが、このバロックの方法に沿って演奏しています。

(音源中の1:29~の箇所)
ピアノパートの和声を見てみると、上接音が非和声音となっているため、長めにゆっくりと始めています。
トリル6

 

トリルの他にも前打音やプラルトリラーなどの装飾音も演奏方法が異なり、「装飾」とはいえ、とても奥が深いです。

バロックの演奏方法に関して以下の書籍もお勧めです。

 

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