金管、木管楽器に「替え指」というものがありますが、クロマティック・ハーモニカにも「替え指」があります。
簡単に説明しますと、下記のように4番の吹く「ド」をスライドレバーを押して吸う「シ#=ド」や6番の吸う「ファ」をスライドレバーを押して吹く「ミ#=ファ」に替えるという方法です。
替え指のメリットとしては、滑らかに演奏ができること、楽に演奏ができることなどが挙げられます。
レッスンの時にも「ここは替え指を使った方がいいのでしょうか?」という質問をよくいただきます。
肺活量やテクニック等々、あらゆる面を加味した上で選択するというのは大前提ですが、ピンポイントでその箇所だけ見ずに、前後関係や曲全体を通して考えてみることをお勧めしています。
例えば、このようなフレーズがあったとします。
ここだけをみれば、替え指を使って
と演奏した方がスラーにもなり、且つ楽になります。
では、これに次のようなフレーズが続いた場合はどうでしょうか。
ここで同じように替え指を使ったとします。
そうすると、前の♪ミファミファミというフレーズは滑らかになりますが、後の♪ソラソラソは吹き吸い交互になるため、同じように滑らかにはなりません。
こういったゼクエンツ(同型反復)の場合、作曲者は同じようなニュアンスを求めていると思われるので、
敢えて替え指を使わない方が、音の粒も揃いやすく、バランスも良くなります。
もちろん、それぞれ一音一音を粘るというのは大前提です。
先日アップした音源「Serenade and Dance」に、似たようなパターンが出てくる箇所がありました。
音源の 3:02 あたりから下記のフレーズが出てきます。
ここで替え指を使って演奏すると以下のようになるのですが、
最初と最後のフレーズは滑らかになりますが、真ん中だけは吹き吸い交互になるため、そこだけニュアンスが変わってしまいます。
そのため、下記のように敢えて替え指を使って
最初のフレーズを吹き吸い交互にすることにより、真ん中のフレーズと音の粒やバランスが整いやすくなります。
ところが、そうすると最後のフレーズだけ吸音の連続になるため、そのまま演奏するとそこだけ滑らかになり、前後のバランスが崩れてしまいます。
最初と真ん中のフレーズの吹き吸いの一音一音を極限まで粘った上で、そこと揃えるように最後のフレーズを喉の奥で少しだけ切って演奏すると音の粒もバランスも整ってきます。